2015年02月20日

挿絵のお仕事から ーおもかげ復元師ー

『おもかげ復元師』という、
本のタイトルは耳にしたことがありました。
納棺師という仕事をされている方が
東日本大震災後に現地に入られ、災害で損傷を受けたご遺体を
生前の姿に戻すボランティアをされ、
そのエピソードが本になった、ということが
新聞記事やニュースに出ていたのを覚えています。
ですが、本を実際には読んでいませんでした。

そして思いがけなく、道徳の教科書の副読本に
入る挿絵を、というご依頼があり
そこで初めて納棺師/笹原留似子さんの
文章を読みました。

副読本に掲載される笹原さんの文は、
4ページ分に収まる、長くはないものです。
どんな挿絵にしようか・・まずざっと読んでみよう・・
などと読み始めたところ、仕事モードの気分は
初めの数行で消え失せてしまいました。
ただただ文字を追って読み終えた後は呆然として、
泣いていました。

この文章には、笹原さんが被災地に入った後、知りあいからの
連絡がきっかけで岩手の安置所を訪れ、
ある男性の復元をしたエピソードが綴られています。
損傷の激しい遺体となった男性の姿に、家族はみなうつむき、
特に残された小学生の男の子は、
「こんなのお父さんじゃない!」と泣き叫んでいます。

この状態では男の子は、とてもちゃんとお別れなど出来ない、
なんとか生前と同じお父さんの姿に戻してあげよう、という
思いで笹原さんはなきがらに向かったのでした。

そうして、笑いじわのある顔の、
優しいお父さんの姿が戻って来ました。
その姿を目にした家族の方達の表情は一変します。
泣き叫んでいた男の子も棺に駆け寄り、涙を流しながら
何度もお父さんに呼びかけるのです。

このことが、笹原さんの
復元ボランティアの始まりだったといいます。

文章には、笹原さんが自ら描かれた
復元された方のお顔のイラストと、実際に
復元の作業をされている写真が添えられています。

私が制作した挿絵では、
このお父さんと小学生の男の子が、
楽しそうにキャッチボールをしています。
この小学生の男の子ぐらいの年頃に映る
お父さんは大好きで特別な存在、
ヒーローでもあるし最高の友人でもある。
そんなお父さんの、生前のいい想い出と良い顔を
思い出してあげてほしい、という気持ちを
笹原さんは亡くなった男性のご家族に伝えています。
この挿絵が、その良い想い出の一場面を
表現出来たなら・・と思いました。

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掲載誌:
中学2年生の道徳副読本
『中学生の道徳 かけがえのない きみだから』(平成27年度版)
(学研)
posted by かこみかん at 22:37| お仕事